こんにちは、Mituso(@Mitsuo29817853)です。
生活保護、このフレーズはたびたびニュースなどで耳にします。
生活に困った人が国から受ける補助金といったイメージですが、実際にはどのような方がこの補助をうけるのでしょうか?
また、障害者が制度を利用することの可否、更に特別児童手当や障害年金などすでにもらっている手当や給付がある場合を考えると複雑になってきそうです。
ここでは、生活保護制度の概要、制度と障害者との関係についてまとめました。
生活保護の概要
生活保護はどのような人が、どの程度の額を受給できるものでしょうか?また、受給には条件などないのでしょうか?
制度の説明をする前に、以下のグラフを見てください。
これは厚生労働省が実施している被生活保護者人員数に関する調査結果です。人数としては減少傾向にあるように見えますが、令和3年3月現在で約205万人が生活保護を受給しています。
205万人という数字は日本で約60人に1人が生活保護の対象になっていることを表しています。決して少ない数ではなく、受給することはめずらしいことではないように思えます。
生活保護の種類とは?
まず、厚労省のHPには制度の趣旨が以下のように書いてあります。
生活保護制度は、生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としています。
つまり、「自立した生活をするために足りなくて困っているお金を支給する」制度ということですが、困っている内容に応じて生活保護には種類があります。
これを扶助(ふじょ:力を添えて助けること)種類と言い、以下のように分かれています。それぞれを足したものが「生活保護」として支給されることになります。
生活扶助 | 日常生活に必要な費用 |
住宅扶助 | アパートなどの家賃 → 一定の範囲内で実費を支給 |
教育扶助 | 義務教育を受けるために必要な費用 → 規定の基準額を支給 |
医療扶助 | 医療サービスの費用 → 直接、医療機関に支給 |
介護扶助 | 介護サービスの費用 → 直接、介護事業者へ支給 |
出産扶助 | 出産にかかわる費用 → 一定の範囲内で実費を支給 |
生業扶助 | 就労に必要な技能の修得等にかかる費用 → 一定の範囲内で実費を支給 |
葬祭扶助 | 葬儀のための費用 → 一定の範囲内で実費を支給 |
生活保護の受給条件とは?
生活保護を受給するには5つの条件があります。
- 収入が「最低生活費」を下回っている
- 病気などの事情があり、十分な収入を得ることが困難
- 資産となる土地などを所有していない
- 年金など他の制度を利用しても生活が困難
- 親族などの支援が受けられない、若しくは受けても生活が困難
これらの条件をすべてクリアしている世帯が申請をすることで生活保護を受けることが出来ます。それぞれの条件をもう少し詳しく見てみましょう。
収入が「最低生活費」を下回っている
「最低生活費」とは厚労省が定めている最低限必要な生活費のことで、「世帯」の人数や住んでいる地域などによって決まります。
生活保護は最低限度の生活を保障する制度なので、これよりも収入が低い場合は足りない分が支給されます。
最低生活費はお住まいの地区を担当するお役所に算出してもらうことになりますが、参考としていくつかの地域、世帯を想定した金額を出してみました。この中に出てくる障害者加算については後述します。
- 青森県青森市 30代の夫婦
生活扶助 115,489円 住宅扶助 37,000円 合計 152,449円 - 東京都八王子市 40代の夫婦 4歳の子供 (障害年金3級相当の障害児)
生活扶助 128,935円 障害者加算 17,870円
児童療育費 10,190円 住宅扶助 89,800円 合計 246,795円 - 宮崎県宮崎市 20代の夫婦 5歳、3歳の子供(それぞれ障害年金1、2級の障害児)
生活扶助 153,002円 障害者加算 41,560円
児童療育費 20,380円 住宅扶助 38,300円 合計 253,242円
病気などの事情があり、十分な収入を得ることが困難
生活保護の基本は「世帯全員がその能力を精一杯活用しても生活が苦しい」ことです。
つまり、働けるはずなのに働いていない、と判断されれば支給の対象にはなりません。
反対に病気やケガ、障害などにより働きたくても働けない、若しくは、出来る限りの収入は得ているが十分な収入となっていない、という場合には支給の対象となる可能性があります。
資産となる土地などを所有していない
土地や車などの売却できる資産はまず活用する必要があります。
例外として、売っても利益にならない土地や、障害などの理由で移動や生活に車が必要である場合は所有が認められることがあります。
家についてですが、支給された生活保護を使って持ち家の住宅ローンを返すことは禁止されているため、残債がある持ち家の場合は必ず売却を求められます。
すでに支払いが終わっている住宅の場合は売却した場合の価値によります。
賃貸の場合、収入に見合わないような家に住んでる場合を除いて、現在の住宅にそのまま住むことが多いようです。
年金など他の制度を利用しても生活が困難
しつこいようですが、生活保護の受給のためには「精一杯の収入を得る」手段を尽くしておかなくてないけません。
これには年金や手当の受給も含まれます。
老齢年金、障害年金、児童手当など全ての手を尽くした後も最低生活費に届かないことが生活保護受給の条件となります。
親族などの支援が受けられない、若しくは受けても生活が困難
民法で定められる扶養義務者からの支援も「精一杯の収入を得る」行為に当たります。
扶養義務者とは以下に当てはまる方々です。
- 祖父母、両親、子供、孫など
- 兄弟、姉妹
- (家庭裁判所が判断した場合)おじ、おば、姪、甥など
これらの方々から支援を受けることが難しい、もしくは支援を受けても最低生活費に届かない、場合は生活保護を受けられる可能性があります。
障害者と生活保護
ここまで生活保護の一般的な情報をまとめてきました。これ以降は障害者と生活保護の関係について考えていきます。
障害者は対象に含まれるか?
もちろん障害者も生活保護の対象に含まれます!
生活保護の基本理念は「生活に困窮する人に健康で文化的な最低限度の生活を保障すること」なので、そこに健常者や障害者の区別はありません。
また、生活保護の扶助種類は先ほどの8種類となりますが、障害者の場合、これに障害者加算がつきます。
この制度は障害がある場合、食料費の増加(車いすの利用などによる消費エネルギーの増加)、住居費の増加(障害に応じた住居環境の整備)、保険衛生費の増加(障害のある部位を清潔に保つための費用)が考えられるため、その補填をするというものです。
対象となるのは原則として障害者手帳1~3級の方ですが、各自治体のHPなどで確認してみてください。
ここで説明したのは「障害者加算」ですが、このほか「重度障害者加算」や「特別介護料」といった加算制度もあります。
障害年金との同時受給は可能か?
これは可能、というよりも生活保護を受ける前提条件として年金をもらえるのであればもらっておく必要があります。
それでも最低生活費に届かない場合は生活保護の支給対象となる可能性が出てきます。
障害年金についてはこちらで説明をしています。
障害者は生活保護制度をどのくらい利用しているか?
生活保護の対象となるには「世帯」全体で条件を満たす必要があります。
つもり、家族と生活している障害者であれば家族全体の収入が最低生活費より低くなっている、家族から離れて生活する障害者であれば個人の収入がそれより低い必要があります。
下の図は厚生労働省社会・援護局が作成した生活保護に関する資料の抜粋です。
これをみると生活保護を受ける高齢者世帯が増え続けている一方で、傷病・障害者世帯による制度の適用は平成23年度をピークに減少しているように見えます。
この資料だけで、障害者を取り巻く収入の状況が改善してきているかは分かりませんが、少なくともまだ40万世帯以上が生活保護の対象となっていることは事実です。
障害者をサポートすることが負担となり家族の収入が減っているのであれば、国や地域のサポート体制が不十分であることを表しているとも言えます。
また、障害者が家族から離れている場合は最低生活費以上の収入を得ることはまだまだ容易ではないでしょう。
グループホームに入居し、障害年金をもらいながら働き、かつ生活保護を受けるといった状況が考えられます。
ちなみに、生活保護を受けながらグループホームで生活することは可能です。
障害者の就労とグループホームについては以下を参考にしてください。
ダウン症児の次男が生活保護を利用する可能性は?
では、今まで書いてきたことを踏まえてダウン症児の次男がこの制度を利用することがこの先ありそうか考えてみました。
結論から先に書いてしまうと、利用する可能性は十分にあります。
というよりも、どの世帯も、だれもが利用する可能性はあります。
これからも次男は両親である私たちと同じ世帯で生活をしていく予定です。
私たちの収入が続く限りは大きな問題はないでしょう。
しかし、次男や私たちに予期しない変化があり、私と妻が働けなくなる、または収入があっても著しく減ってしまった場合は世帯として生活保護も検討することになるでしょう。
健常児よりも障害児がいる世帯の方が収入に影響する変化がおきる可能性は高いと思います。
しかし、生活保護を受けるということは子供にも様々な制約を与えることになります。
例えば、生活保護を受けている世帯では子供の大学進学は認められません。
ダウン症児の次男が大学に行けるかどうかはさておいて、選択肢にあげることもできません。
これは、「健康で文化的な最低限度の生活」の中には大学は含まれず、ぜいたく品のように考えられているかだと思います。
親としてはやはり子供にはできる限りの自由と選択肢を与えたいです。
どうしても行きたい場合は次男だけを「世帯分離」することになりますが、その場合は生活保護の受給額が下がります。
このように生活保護は命を守ってくれますが、自分の望む生活を保ってくれるものでは必ずしもありません。
どうしようもない場合のセーフティネットとして生活保護制度を知っておくことは大切だと思いますが、やはりできる限りの手段は尽くして生活保護を受けないでいられる収入を保っていたい、というのが私の今の思いです。
当たり前のことかもしれませんが・・・。
最後に。
生活保護制度と障害者との関係についてまとめました。
生活保護があるから失敗しても大丈夫、と考えることもできますし、生活保護が守ってくれるのは最低限度の生活だけ、と考えることもできます。
制度の感じ方は人それぞれだと思いますし、まずは制度を知っておくことが大切だと思います。
理想は障害があることが世帯や本人の収入に影響しない、ということだと思いますし、平等で公平な選択肢がみんなに用意されている環境を目指してできることを探していきたいと思います。