ダウン症とは21番目の染色体が1本多い状態を指しますが、なぜこの状態が生まれるのでしょうか。インターネットで検索すると、こんな文章が出てくることが多いと思います。
「卵子や精子の分裂異常、または受精時に偶然起こる染色体異常が原因である」
受精時に起こる染色体異常が原因だとすると、人に限らず動植物全体で起こりえないでしょうか? 今回は人以外で起こる染色体異常についてまとめました。
染色体異常は人だけでなく、動植物でも起きるか?
先に答えになってしまいますが、染色体異常、もしくは遺伝子の突然変異は植物でも他の動物でも起こっているようです。。
四つ葉のクローバーは染色体異常?
植物で代表的なのは「四つ葉のクローバー」です。少なからずこれまでダウン症にふれる機会があった方はダウン症児の例えとして「四つ葉のクローバー」が使われているのを目にしたことがあるかと思います。
少しクローバーについて調べてみるといろいろと面白いものが出てきました。
・突然変異は遺伝とは限らない
クローバーの茎には葉の赤ちゃん(「原基」というそうです)が3枚ついていて、これが人に踏まれるなどして傷つき、本来1枚となる葉が2枚に分かれた結果四つ葉になることが多いようです(厳密には3つの「小葉」が集まって1枚の「葉」)。
それとは別に、遺伝子の突然変異により四つ葉になることもあり、突然変異する遺伝子は今だ解明されていないそうです。
・ギネス記録は56葉のクローバー!!
四つ葉や五つ葉のクローバーなら公園でも発見できますが、ギネス世界記録は圧巻の56葉のクローバー。
しかも日本の岩手県で発見されたそうです。
・四つ葉×四つ葉=四つ葉とは限らない
突然変異した四つ葉のクローバーを受粉させる場合、自家受粉(花粉が同じ花の柱頭につくこと)させると四つ葉になる確率が高く、一方で四つ葉の花粉をほかの四つ葉に受粉させても四つ葉になるとは限らないそうです。
遺伝子情報が伝わっていても伝わった性質が必ず出るわけではないからだそうです。
動物ではどんな例があるか?

では、他の動物はどうでしょうか。
日本で有名なのは京都大学霊長類研究所チンパンジー・アイの「カナコ」でしょうか。
「ダウン症」は厳密には「ヒトの染色体異常」という定義なので動物には現在は当てはまりませんが、チンパンジーの22番染色体異常が人の21番染色体異常(21トリソミー)に相当することが正式に発表されています。
ちなみにチンパンジーの染色体は23対の常染色体、1対の性染色体で計24対・48本とのことで、ヒトよりも1対多いそうです。
彼女は人の21トリソミーでみられるような合併症があり、乳児期白内障となり、心疾患も持っています。白内障の影響で失明してしまっていますが、ほかの大人しいチンパンジーと交流を持つ時間が作られているそうです。
あとはデンマークの猫の「モンティ」です。
こちらも厳密には「ダウン症」ではありませんが、染色体異常がありダウン症に似た症状があらわれています。
シェルターにいたモンティは引き取られ、その可愛らしさでSNSで話題になりました。「猫 モンティ」で検索するとたくさん画像やエピソードが出てきます。
他にもダウン症と類似する特徴をもつホワイトタイガーもいます。こちらも検索してみるとすぐに画像が出てくると思います。
動植物の染色体異常から思うこと
ここに挙げたのはほんの一例です。自然界、特に動物では染色体異常で生まれてきた場合、どうしても運動能力で劣る面があるので淘汰されてしまうため、例としては多くはあしませんが、染色体異常は起こりえることです。
細胞、染色体、DNAで体が構成されている以上、体を作る過程では一定の確率で異常が起きるのはすごく自然なことだと思っています。生きていれば当たり前に起きえることの一つです。
だから、ダウン症と向き合ったばかりのご両親や親族は誰かを責める必要はないんです。生きていれば当たり前に起きることです。
こういった感覚がもっと当たり前になってほしいなと思います。