「自閉症」の「生きづらさ」と「支え方」の話。

「自閉症」の「生きづらさ」と「支え方」の話。 その他

こんにちは、Mituso(@Mitsuo29817853)です。

ダウン症児の父になって5年半ほど経ちますが、障害児の父になると他のいろいろな障害も耳にしたり、目にしたりすることが多くなります。

その機会がもっとも多いのが「自閉症」です。

最近では「自閉症スペクトラム」と呼ばれることが多くなり、その解釈に広がりが出てきていると言われています。

しかし、ダウン症のように先天的な染色体異常や見た目で分かるはっきりとした特徴は乏しく、障害の定義も広いことからどこか掴みどころがない印象はないでしょうか?

そこでここでは、自閉症という障害についてできる限り分かりやすくまとめました。

自閉症という障害が自分にも関係があるかもしれない障害であることが伝わるかと思います。

また、最後にダウン症と自閉症との関係性についても書きました。

ブログの内容は以下の本を参考にさせていただき、私が調べた内容も加えています。

この本では自閉症スぺクラムの方が感じる生きづらさについて、たくさんの事例をつかって説明しています。また、どのように周囲が支えていくか、自身も自閉症スペクトラムかもしれないと思ったときに何をしておくべきか、など幅広く触れられています。とても勉強になりました。

自閉症スペクトラム 10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体 (SB新書)
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自閉症とは?

まず、自閉症について一般的な特徴、原因、対象者の推移を見てみます。

自閉症(スペクトラム)の特徴

自閉症は発達障害のひとつであり、最近では自閉症スペクトラムという呼び方が一般化し、その定義や解釈が拡大しています。

スペクトラムとは「範囲、広がり、連続」といった意味です。

自閉症スペクトラムの特徴は様々ありますが、簡単にまとめると以下のように表現されます。

自閉症(スペクトラム)の特徴
「臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心、やり方、ペースの維持を最優先させたいという本能的思考が強いこと」

突拍子がない特徴といったわけではなく、障害がなくとも当てはまるような印象を受けないでしょうか?

冒頭でご紹介した本の作者も書いていますが、このような特徴をもつと思う方は大勢いると思います。

自閉症スペクトラムの人たちは実はそんなに稀な存在ではないということです。

かつての「自閉症」から「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」などの発達障害、さらに似たような特徴はあるけれども障害として認識されたかったものも含めた総称として「自閉症スペクトラム」は広まってきました。

一見すると生活に支障がないとさえ思えてしまう自閉症スペクトラムの特徴ですが、障害としての特徴が周囲から分かりづらいこその「生きづらさ」「葛藤」があるのだと思います。

自閉症の原因

では、このような特徴はなぜあらわれるのでしょうか。

現時点では自閉症の発生原因は特定されていません。

しかし、遺伝要因と環境要因が関連しあっておこる脳機能の障害だという考え方が主流になっています。

遺伝要因とは親からの引き継いだ遺伝子が複雑に関連しあって生じるものです。

また、環境要因は妊娠初期の喫煙、出生前後の偏った栄養など、こちらもたくさんの要因が関係しあっています。

繰り返しになりますが、現時点では自閉症の原因は特定されていません。

ただし、自閉症は先天性の障害であることははっきりしています。

つまり、生まれつきの障害です。

それにもかかわらず、ダウン症のような選定性障害とは違い出生してすぐには障害に気づくことはまずありません。

ダウン症の場合は筋肉のゆるみや身体的な特徴により、出産後、医師や看護師がすぐに気づく場合がほとんどです(正確な告知を受けるのは少しだけ先になりますが・・)。

また、出生前に遺伝子検査により分かっていることもあります。

しかし、自閉症の場合は早くても一歳半検診の頃に気づくと言われています。

これまで障害とは無縁で育ててきている子供が、後になって障害があると気づかされてしまうこともをれを受け入れるためのひとつのハードルになるのだと思います。

自閉症者数の推移

自閉症から自閉症スペクトラムへと捉え方が広がっていますが、対象者数はどのように変わっているのでしょうか。

ここではひとつの例として、文部科学省初等中等教育局特別支援課が作成した資料から特別支援級の児童数の推移をみてみます。

特別児童支援級の生徒数は増加傾向が続いていることが分かります。

その中でも身体、および知的障害と比較しても「自閉症・情緒障害」の増加が顕著に表れています。

R2年時点で自閉症・情緒障害は知的障害を越えて最も多く、15万人以上が対象になっています。

これまで障害、自閉症の対象とは考えられてこなかった子たちが幅広いケアの目により早期に発見されているという変化がよく分かります。

また、これは適切な教育の機会に早期に出会えるようになってきているとも言えそうです。

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自閉症は分かりづらい障害?

自閉症(スペクトラム)の特徴
「臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心、やり方、ペースの維持を最優先させたいという本能的思考が強いこと」

自閉症の特徴について先ほどこのように書きましたが、こういった特徴のある方と接することは案外身の回りで多くないでしょうか。

しかし、それらすべての人が自閉症というわけではないでしょう。

冒頭で紹介した本の著者も障害自閉症スペクトラム」という状態があることを説明しています。

では、障害としての自閉症はどのように線引きされるのでしょうか。

自閉症の診断基準

自閉症の診断はアメリカ精神医学会が発行している「DMS-5」という診断基準をもとに、専門医が行います。

診断基準はかなり細かく複雑で、専門医ではない私たちが読んでもあまりピンとこないと思います。

簡単にまとめると、さきほど書いた自閉症の特徴「臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心、やり方、ペースの維持を最優先させたいという本能的思考が強いこと」による困りごとが

・学校や家庭など複数の環境で起きていること
・日常生活や社会生活に大きな影響がでていること
・発達早期から継続していること

などが判断の目安になります。

あくまで目安であって、こうなったら必ずこう、というのがわかりづらいところが身体障害とは大きく異なるところです。

自閉症の診断方法

自閉症に限らず発達障害では検査だけで診断されることはほとんどありません。

検査だけでなく両親への問診や、遊んでいる様子を観察することで自閉症の特徴について判定をしていきます。

両親への問診では普段の様子や、保育園・幼稚園にすでに通っていればその様子も聞かれるようなので、園での様子が分かるものを持参するとよいようです。

また、判定までに複数回の診断を行うことも多く、確定までには多少の時間がかかります。

自閉症の方の支え方

自閉症は先天的な障害であり、治療によって完治する、ということはありません。

専門医などと協力し療育の計画を立てることで、長所を伸ばし、苦手なことを軽減していくことで生活をしやすくすることを目指していきます。

障害を理解し、長期的な目線を持つことが大切なのだと思います。

自閉症児(者)をサポートしていく考え方として、本の著者は以下のように書いています。

発達スタイルが違うことを理解する
 「○歳までに○○できる」というのは単なる統計データであって、育児・子供のノルマではありません。
 必要な時間はそれぞれですし、教えてできることもあれば、できないこともあります。背が低いひとが長身を望んだとしても、大人になってもそうはならない、といったことが対人関係などでも起こるでしょう。自閉症の人たちが物心がつくのは思春期ころであることが多いので、それまでは特訓はせず、頑張らせすぎないように注意しましょう。

思春期よりも前の支援
この時期に最も重要なのは「いじめ」や「不登校」の二次的な問題の予防です。これを防ぐために以下のことを意識します。
(1) お膳立てをして、「保護的な環境を提供しましょう」
(2) できて当たり前と思わず「得意なことを十分に保障しましょう」
(3) 特訓は強要するものではありません「苦手なことを特訓は極力させないようにしましょう」
(4) 子供に寄り添って「大人に相談してうまくいったという経験を持たせましょう」

本には項目ごとに詳しく書いてあります。
まだまだ発達途中のこの時期は、健常の子よりも更に意識して本人が活動し続けられる環境を作ってあげることが大切なのだと思います。
本人はもちろんですが、サポートする周囲もこの時期は大変なことがたくさんあることが想像されますが、サポートする人も自分をサポートしてくれる人を上手く見つけて、甘えながら過ごせる循環が作れるとよいですね。

思春期以降の支援
思春期以降は失敗が起こることも覚悟のうえで試行錯誤させてみる時期です。
(1) 本人の決断、SOSを見逃さない「親の役割は黒子」になる
(2) 能天気さを身につける「目標を持ち、自信のある明るい性格を目指そう」
(3) 1ランク下の余裕をもつ「進路選択の目安」を持つ
(4) 試行錯誤する意欲、良き支援者を近くに置く意識「就労への取り組み」

(1)や(2)などどこか理想論のようにも見えますが、本人が決断し成功する体験をできる限り多く目指すことで、本人も周囲の方々も徐々に外にベクトルを向ける時期なのだと思います。

二次的問題への対応
(1) 子供のいじめは大人が積極的に介入して守ってあげましょう
(2) うつ、不安、適応障害、パニックなど感情のコントロールが難しい場合は精神科の受診をしましょう


いじめへの介入は大人が入っていくことで更に悪化することを心配することもあると思いますが、自閉症児の支援の場合は躊躇なく大人が入っていくことが推奨されています。

これらのことがより詳しく書かれており、このほかにもたくさんの対策、考え方が挙げられています。

すべてはまとめきれませんが、最後にひとつとても重要な考え方がインクルーシブ教育として以下のように書かれています。

インクルーシブ教育
「皆が一緒に参加するためにこそ、一人ひとりの個人の対する特別な配慮が必要」

日本人は平等を好みますが、平等は皆で同じことをやるのではなく、皆が楽しいと思える環境を目指していくことです。

誰かが誰かを支え、自分も支えられるような循環ができれば最高です。

自閉症かと思ったら?

ここまで読んでいただいて、お子さん、自身や近くの方が自閉症かと思った方もいるのではないでしょうか。

本の作者は自身が自閉症かも、と思った際の対処について以下のようにまとめています。

まずは以下の質問に「はい」か「いいえ」で答えてみてください。

ご自身で回答するだけでなく、同様の質問を周囲の方にしてみて、自分がどのように見えているか確認をしてください。

・臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心ややり方、ペースの維持を最優先させたいという志向が強いですか?
・仕事かプライベートで、前の質問の志向が原因で困っていることがありますか?

ひとつめの質問は「はい」、ふたつめの質問は「いいえ」であれば非障害型の自閉症の可能性があり、今の生活で困っていることがなければ対応の必要はないでしょう。

しかし、両方とも「はい」であった場合は自閉症の可能性があるため精神科の医療機関と支援センターなどの相談機関に一度相談をしてみてください。

どのような場合でも以下について意識をすると少し生きづらさが和らぎます。

・自分の得意なことを仕事や趣味のなかで存分に活かすこと
・自分の限界を知り、苦手なことにとらわれすぎないようにすること
・社会のルールを守り、筋の通った行動をとること
・自分の手に余ることについては、頼れる相談相手を確保していくこと

というのが著者の考えです。

私は特に最後の相談相手を確保すること、というのが特に重要だと感じました。

周囲の方と摩擦が生じやすい障害だからこそ、自分を理解して間にはいってくれる理解者がいることは気持ちの安定にはすごく大切だと思います。

これは障害にかぎらず、社会で生活する全員が意識しておくことかもしれません。

結局のところ、マイノリティが生活しやすい環境は全てのひとにとって生活しやすい環境になるということで、目指すべき目標なのだと思います。

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自閉症とダウン症の関係とは?

ここまで自閉症について書いてきました。

私はダウン症児の父ですので、最後にダウン症と自閉症の関係について書きたいと思います。

ダウン症と自閉症は障害のなかではよく耳にする方だと思います。

しかし、その根本原因は異なり、互いに関係性がない別個の障害と考えられています。

正確にいえば、関係性が証明されていない、というべきでしょうか。はっきりしていません。

ダウン症は先天的な染色体異常、自閉症は脳機能の障害で直接の関係性はないように思えますが、染色体異常により脳機能の発達に影響が出ていないとは言い切れません。

また、ダウン症児で自閉症の判定を受けることも実際多くあるそうです。

一方で、ダウン症と混同され自閉症の特徴が見逃されてしまっているケースも多いと言います。

そのため、ダウン症児に以下のような特徴がみられた際は自閉症について医師に相談したほうがよいかと思います。

・遊びを周りと共有したり、友達を作るのが難しい
・おもちゃなど周囲への興味、関心が少ない
・限られた同じことを繰り返しし続ける傾向が強い
・感覚刺激に過剰反応したり、逆に危険に対して恐怖心がない

すでにダウン症の子供に障害を重ねるようで親としては気が引けるかもしれませんが、気づかないふりもしてもいずれ感じてしまう本人の「生きづらさ」は早くに対策をたてることがポイントになります。

まとめ

自閉症についてまとめました。

自閉症はダウン症と異なり、判定基準が難しい障害です。

また、その特徴や長所、悩むところも人それぞれで捉えどころが難しい障害でもあります。

しかし、そのため求められるのは一人ひとりに合わせたケアと、そういった障害もあるのだという周囲の理解だと思います。

誰しもが暮らしやすい社会を作ることはいつか自分にとっても優しい世界になります。

そのためにも自閉症のように個々人にフォーカスする必要のある障害の理解がすすむことが必要なのではないでしょうか。

その他
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ダウン症って特別じゃない
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