ダウン症の「難聴」と「補聴器」と「購入費助成」の話。

ダウン症の難聴と補聴器と購入費補助の話 ダウン症のこと

ダウン症は難聴を合併していることが多いとよく言われます。以前に別の記事でも書きましたが、ダウン症では滲出性中耳炎となっていることが多く、これが難聴の原因にもなります。

難聴はただ聞こえづらいだけでなく、言語や学習の発達の遅れにつながるため出来るだけ早急に対策をとることが望ましいと言われていて、補聴器はその主要な対策になります。
でも、補聴器の購入やその助成金の受け方などなかなか分かりづらいものがあります。

 滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)
鼓膜の奥の中耳という場所に滲出液という液体がたまる病気。耳とは鼻は「耳管」という管でつながっていて、耳管が上手く働かないと、粘膜からしみ出てきた浸出液が中耳腔にたまってきます。
痛みがないため気がつきにくいことが多い疾患ですが、小児の難聴の原因としては最も多いもので、慢性化すると難治性になることがあり注意が必要。

この記事では、新生児・ダウン症児の難聴について、補聴器について、また補聴器購入に際して受けられる助成制度についてまとめます。

新生児・ダウン症児の難聴

幼少児期のダウン症の約4割~8割程度は片耳、もしくは両耳が難聴であると言われているため、ダウン症児の多くは耳鼻咽喉科の定期的な診察が必要です。

現在、日本で赤ちゃんが生まれた場合、障害に関係なく「新生児聴覚スクリーニング検査」を受けることが推奨されています。

この検査の目的は難聴の早期発見、早期診断、それに伴う早期療育の開始にあります。先ほど書いたように、難聴は言語発達に関係し、両耳が中等度以上の難聴の赤ちゃんは1歳未満からの補聴器使用が必要とされています。

新生児聴覚スクリーニング検査
自動聴性脳幹反応検査(AABR検査)、または歪成分耳音響放射検査(DPOAE検査)のどちらか、若しくは両方が実施されます。
AABR検査:精度が高いが、高額になりやすい。また、生後6か月ほどまでしか受けられない。
DPOAE検査:精度は若干劣るが、比較的安価。大人も施行可能。
検査の結果は「PASS(難聴なし)」と「REFER(要再検査・精密検査)」で表示されます。
精密検査では、医師等により、外耳道が狭くないか、鼓膜の状態がどうかなど観察されます。また、先ほどのAABR検査をプロ仕様にしたABR検査というものが実施され、様々な周波数のクリック音を1000~2000回イヤホンから聞かせ、耳の後ろ側と頭頂部に貼った電極から脳波を測定することで聴力を調べます。

ダウン症児の難聴の原因は主に以下の5つです。

① 先天性外耳道狭窄症
外耳道が狭く柔らかいため、音が鼓膜まで届きにくい状態になります。また、耳垢も溜まりやすくなります。ただ、ずっと狭いままということはほとんどなく、成長と共に外耳道が固く広くなっていきます。

② 中耳間葉組織の中耳腔内遺残
母胎の中にいた時からある間葉組織が中耳腔に残ってしまっている状態で、中耳腔が塞がる、もしくは狭くなるため難聴の原因となる。

➂ 滲出性中耳炎
説明はこの記事の上のほうに書きましたが、投薬治療で改善しない場合は鼓膜チュープ留置術という治療が行われます。手術により鼓膜にごく小さな切開を加え、換気チュープを入れる方法。チュープは半年から1年で自然に脱落します。
次男がこの手術を行い、3日ほどの入院でした。チュープの脱落は正直全く分からず、いつの間にかなくなっていました。

④ 聴神経、脳幹の発達未熟成
聴神経や脳幹(生命維持に関与する意識・呼吸・循環を調節するなど脳のとても重要な部分)の発達が不十分で、ABR検査で明確な反応が得られないこともあります。

➄ 内耳奇形
内耳の一部が低形成、奇形であるため難聴となります。医療での改善は困難ですが、成長と共に状態が改善することもあります。

補聴器の作成手順

作成について、と書きましたが、正直なところ作成について困ることはないように思います。診断をしていただいた医師や病院から意見書を頂き、紹介された補聴器販売店で作成する、という流れです。


補聴器は耳あな型耳かけ型ポケット型など様々な種類がありますが、小さな子供では耳かけ型がほとんどだと思います。

また、耳かけ型の場合は安定感や音の質の向上のため、イヤーモールド(オーダーメイドで作る大きなイヤホンみたいなもの)を作成することが多いと思います。
イヤーモールドは耳型をとって作成するため、耳の形が成長と共に変わるたびに定期的に再作成することになります。
(補聴器本体の色もそうですが、イヤーモールドも色がたくさんあるので組み合わせに悩みます・・。子供の耳回りはおしゃれにしたいじゃないですか・・。)

作成に困ることはあまりありませんが、付けるのには苦労するかもしれません。

理由は単純で付けるのを嫌がるからです。

もちろん個々に違いはあると思いますが、耳に何かを詰められ、今まで聞こえなかった音が聞こえるのわけで、無理のないことだと思います。我が家も最初は付けても、いつの間にか外して放り投げていることがあります・・。

聴力の回復のため、根気よく装着してもらうことを繰り返していきましょう。

補聴器購入で受けられる助成金と手続き

耳かけ型の補聴器の価格は安くても数万円はします。子供のためでお金を使うのは惜しくはありませんが、受けられる支援や助成金は余すことなく受けるべきです。

難聴に関する助成金だと身体障害者手帳を持っていないと対象にならないと思う方もいると思いますが、手帳の対象となっていない軽度・中等度の難聴児に対しても助成制度がほとんどの自治体であります。

助成金の対象となる条件は簡単に以下の通りです。

 満18歳未満であること
 住民登録をしている地区で申請をすること
 聴覚障害に関わる身体障害者手帳の交付基準に該当しないこと
   (→手帳を持っている場合、他に優先される給付制度があるためです)
 補聴器相談医である医師が装着の有効性を判断し、意見書を作成していること

必要な手続きは以下の通りです。

  1. 医療機関の受診
    普段やり取りをしている医師と相談するか、お役所窓口で相談医のいる病院を紹介してもらうといいと思います。
  2. 意見書の作成
    補聴器相談医に意見書を作成してもらいます。意見書様式はおそらく相談医が持っていると思いますが、お役所のHPからダウンロードもできます。
  3. 見積書の作成
    意見書を補聴器販売店に持参し、見積書を作成してもらいます。
  4. お役所での申請
    申請書、意見書、見積書をセットにして、担当窓口に提出してください。
  5. 支給の決定
    審査が実施され、助成が決定した場合は決定通知書、支給券が送られてきます。
  6. 補聴器の受け取り
    補聴器を受け取ります。

助成金の受け取りに関しては請求を補聴器販売店に委託するかどうかで少しだけ手続きが変わります。

・助成金の請求、受領を補聴器販売店に委任する場合
 自己負担額を補聴器販売店に支払い、支給券、委任状、請求書を販売店に渡します。委任状や請求書の様式はお役所HPに大抵あります。

・助成金の請求、受領を補聴器販売店に委任しない場合
 支給券に補聴器納入年月日、補聴器販売店の代表者名・代表印の押印をもらい、費用の全額を支払った後に領収書を発行してもらいます。これらと請求書を作ってお役所の担当窓口に持っていきます。

この結果、自己負担額は0~1割ほどになります。

補聴器や、このほか医療用装具は高価な上に健常者には馴染みのないものが多く、助成金の手続きも一見すると複雑なものにみえるので大変そうに思ってしまいますが、ひとつずつアドバイスを受けながら順を追っていくと何とかなりますので、まずはお役所窓口に相談するところから始めてみましょう。私も日々勉強です。

補足ですが、この助成金はお役所手続きのみで終了していますが、加入している健康保険組合を介して手続きをすることがあります。「療養費払い」をしたときです。
療養費払いは、保険証を使用していないときや、治療用装具などを制作したときなどにいったん病院などの窓口で医療費を全額支払い、その後健康保険組合などに給付分を請求し払い戻しを受ける、というものです。
私たちの場合、補聴器は上述の役所手続きのみでしたが、メガネや、インソールに対する支払いはこの療養費払いでした。
正直なところ、どういったものが療養費払いになるのか、若しくはならないのか、の区別がちゃんとついていません。お恥ずかしい・・。
治療のために一時的に使う治療用装具は健康保険による給付があり、そうでないものは助成金の対象になる、と聞きますが、どれがどっちに該当するのか・・。
お役所やメーカーさんで教えてもらいながら都度対応している状況です。
ちゃんと整理できたら、別記事で書きたいと思います。

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