「通級」と「特別支援学級」と「特別支援学校」の話。

「通級」と「特別支援学級」と「特別支援学校」の話。 社会制度のこと

ダウン症の次男がこの春から年少クラスで幼稚園に通うことになりました。

そして3年後、次の就学先を選択することになります。小学校の普通級も選択肢に残しつつ、主には「通級」「特別支援学級」「特別支援学校」の中から選択することになるだろうと想像しています。

後悔しない選択をするためにまずは理解する必要があるということで、それぞれの概要に加えて入学の手続き、地域差などをまとめました。

そもそも親が決定権をもっているものでもなかったので調べてよかったなと思います・・。

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通級、特別支援学級、特別支援学校とは?

それぞれの概要は以下のようになっています。基本的に対象の障害の程度が軽いほうから「通級」「特別支援学級」「特別支援学校」となっています。

通級(通級指導教室)

概要
 小・中学校に通う比較的障害の程度が軽い子供が個別の指導を受ける教室のこと。通常学級のクラスに籍を置きながら、週に何時間か通級に通います。通っている学校に通級教室がない場合は、近隣の他校に通うこともあります。通級は勉強の遅れを補うための場所ではなく、自分の特性を本人と周囲が理解し、学習上または生活上の困難を和らげることが目的です。 児童それぞれに支援計画が立てられます。例えば、漢字を覚えるのが難しい児童の場合は、漢字そのものではなく、覚え方を学習したり、眼球運動をスムーズにするためのとトレーニングなどを行います。

対象児童:
 通常の小中学校に通っていて、特別支援学級には在籍しておらず、障害により特別の指導を行う必要がある生徒 言語障害、発達障害(自閉症、ADHD、学習障害)、弱視、難聴などを持つ子供 (詳細は学校教育法施工規則第140条)

利用者数:
約109,000人(平成29年文部科学省データ)(内、言語障害が37,600人で最も多い)
義務教育の全児童数 989万人の約1.1%で増加傾向

特別支援学級

概要:
 障害のある子供のために、通常の小学校や中学校内に置かれる学級のことで、通常学級での学習が難しい児童を対象に、少人数制のクラスで授業を行い、一人ひとりに合わせた学習を行うことを目的にしています。
 学習指導要領に高等学校の特別支援学級についての具体的な記述がないため、特別支援学級を置いている高等学校はほとんどありません。 小中学校の通常の学級においては、特別な教育ニーズについて検討する校内委員会や、保護者と関係機関との連携を行う特別支援教育コーディネーターの指名など校内体制の整備が進んでいます。
 この後に説明する特別支援学校が「生活上の自立を図ること」を目的としているのに対して、特別支援学級は「個々に合わせた学習教育」を目指してい点が両者の大きな違いになります。

対象児童:
 障害があるために、通常の学級における指導では十分な指導の効果を上げることが困難な生徒(知的障害、肢体不自由、身体虚弱、弱視、難聴など)。
 例えば、知的障害は以下のような程度の基準があります。 「知的発達の遅延があり、他人との意志疎通に程度の軽度の困難があり、日常生活を営むのに一部援助が必要で、社会生活への適応が困難である程度」 これは、その年齢での健常児と比較して、日常会話はほぼ可能であるものの、抽象的な概念を使った会話が困難、というくらいです。

利用者数:
約235,500人(平成29年文部科学省データ)(内 知的障害が113,000人で最も多く、次いで自閉症、情緒障害が110,500人)
義務教育の全児童数 989万人の約2.4%で増加傾向

特別支援学校

概要:
 心身に障害のある児童が通う学校で、幼稚部・小学部・中学部・高等部があります。基本的にそれぞれの学年、学校に準じた教育を行いますが、これに加えて「生徒の自立を促すために必要な教育を受けることが出来る」というのが大きな特徴で、時間割には国語、算数、音楽などの他に「自立活動」という時間があります。
 また、生徒の障害や発達の度合いによって、個別の指導計画や教育支援計画が作られることも大きな特徴です。先ほどの自立活動もこの計画に基づいて実施され、例えば四肢麻痺がある児童に対して姿勢保持のための指導が実施され、工夫が繰り返されます。
 教科書についても配慮があり、小学校などと同じ教科書の他、例えば視覚障碍者用の点字教科書、知的障害者用の国語、算数、音楽の教科書など障害の状態に合わせたものが使用できます(この障害の状態に合わせた教科書はまだあらゆる障害、状態に対応しているわけではないようです)。
 教員は教員免許の他に、特別支援学校教育免許を持っています。

 最後に卒業資格についてですが、「高等部」を卒業しても一般的な高等学校を卒業した人が得られる「高卒」の資格は得られず、「特別支援学校高等部卒業」となります。ただし、大学入学資格は得ることができ、また、企業によっては障害者雇用を行う際、特別支援学校高等部卒業資格を高卒と同等に扱う場合もあります。

対象児童:
 心身に障害を持っていたり、大きな病気を患う児童 (視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱など)
 例えば、知的障害については以下のような程度の基準があります。
・知的発達の遅延があり、他人との意志疎通が困難で日常生活を営むのに頻繁に援助を必要とする程度
・知的発達の遅延の程度が上述したものに達していないもののうち、社会生活への適応が著しく困難なもの
 これは、その年齢段階に標準的に要求されるコミュニケーション能力が身についておらず、相手から発信された情報が理解できない、的確な対応ができない、というくらいです。

利用者数:
約141,900人(平成29年文部科学省データ)(内 知的障害が128,900人で最も多く、次いで肢体不自由が31,800人。自閉症や情緒障害などの発達障害は実績データにありませんでした)
義務教育の全児童数 989万人の約0.7%で増加傾向

義務教育児童数は減っていく傾向の中で、通級、特別支援学級、特別支援学校に通う生徒は全て増加傾向にあり、これらに通う生徒を全て合わせると、義務教育児童数の約4.2%になります。

この増加傾向が続くかどうかは分かりませんが、今後も一定数の需要があることは確かだと思います。

どのようにして入学するか?

一般的な幼稚園であれば願書を取りにいって提出したり、小学校であれば住んでいる地域の役所から書類が届き手続きが開始されます。

では、障害のある子供の場合はどのように就学先が決定されるでしょうか?

結論から先に書くと、地域の教育委員会の判定により決まります。

まずは、地域自治体の就学相談窓口に相談申し込みを行い、書類の提出、専門の職員との面談を行います。その後、医師や幼稚園・保育園からの情報、また、親や本人の意向が最大限尊重されたうえで就学先が決定されます。

ただ、判定に不服がある場合は教育委員会に申し立ても出来るようですし、就学後も子供の状態を見ながら就学先の見直しが実施されます。

時期としては、

  1. 年長の6月頃まで:情報収集
    地域の特別支援学級や特別支援学校などについて、ホームページや教育委員会への問い合わせにより情報を集めます。
    学校の見学会や説明会、文化祭などで雰囲気をつかんでおければよいですね。
  2. 7~9月:就学相談
    先ほどの就学相談窓口に連絡し、面談を行い就学先を決定していきます。子供の状態を正確に伝えるため、診断書や療育手帳があれば持参するといいでしょう。
  3. 10~11月:健康診断と選択
    入学前の健康診断と、身体検査、発達検査、知能検査など実施します。

あくまで一例なので、詳細はお住まいの自治体に相談してみてください。

教育委員会が行う特別支援学級と特別支援学校の判断についてですが、どちらに通うべきかという明確な基準はなく、障害の程度や状態は人それぞれであるので、基準の作成は今後も難しいことが予想されます。一般的な判断基準として、排せつや食事、着替え、意思伝達などは出来るが学習の遅れがある場合は特別支援学級へ、困難な場合は特別支援学校となるようです。

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地域差はどうか?

例えば、特別支援学校を考えているがそもそも住んでいる地域には特別支援学校がない、特別支援学校ばあるが希望する障害を対象としていない、などの地域による差はあるのでしょうか?

少し古いですが、特別支援学校数について文部科学省が2008年にまとめたデータがあります。

これによると特別支援学校は全国で1013校、そのうち、人口が多い東京には66校と最も多く、次いで土地の広い北海道に66校、以下人口が多いところには想定的に多く設置され、少なくとも10校ほどの特別支援学校が各都道府県に満遍なくあります。

ただし、同じ特別支援学校でも対象により数にバラつきがあります。
視覚障害を対象とする特別支援学校は全国で71校、都道府県別では北海道で最も多く5校、以下、どの県も1~3校の設置です。
一方で、知的障害を対象とする特別支援学校は全国で505校あり、こちらも北海道が最も多く36校ですが、全体の学校数は少なくない京都府が2校しかありません。対象となる障害によっては都道府県別でみるとその割合に差はあります。

次に特別支援学級について、こちらも古いですが、文部科学省が同じく2008年にまとめたデータがあります。

全国で小学校の特別支援学級は計26,297学級、この内、知的障害を対象としたものが最も多く13,736学級、視覚障害を対象としたものが最も少なく194学級となっています。

都道県別でみると特別支援学校とは違う傾向になり、学校数が最も多かった東京都は678学級で、神奈川の1,818学級、大阪の2,146学級と比較するとかなり少ない印象です。

基本的には通常級に入りにくいことが考えらる障害を中心にバラつきは多少あるものの、全国に相当数の特別支援学校や特別支援学級が設置されてはいる印象です。しかし、障害は個々の症状によって対応が異なるため、希望する障害を対象とした学級や学校が住んでいる地域にあるかは引っ越しなどを検討されている際は特に注意が必要そうです

何を重視して決めるべきか?

就学先について両親と本人の意向が尊重されますが、では何を重視して希望を決めるのがよいでしょうか。

まずはそれぞれのメリット、デメリットを簡単にまとめます。

通級

【メリット】
・通常学級の子供たちと接す機会が多い
・通常学級での授業が受けられる
・通常学級から離れる機会もあるため、心身のリセットとして活用できることがある

【デメリット】
・在籍基準があいまいである
・すべての学校に通級があるわけではなく、特に高校では制度が整えられていない
・受け入れ態勢に地域差がある
・通常学級との交流が子供のストレスになることがある

特別支援学級

【メリット】
・教科によって通常学級の授業を受けるなど、通常学級の子供たちと接する機会が多い
・個別のカリキュラムにより、苦手強化の学力を伸ばすことができる

【デメリット】
・教員に専門知識が乏しいことがある
・障害者向けの進路情報などの情報が入りにくい
・通常学級の子供たちと比較してしまう可能性がある
・すべての学校に特別支援学級があるわけではなく、特に高校では制度が整えられていない
・通常学級との交流が子供のストレスになることがある

特別支援学校

【メリット】
・特別支援学校教員免許を持った専門的な職員が勤務している
・バスでの送り迎え、施設のバリアフリー化、専門の療法士が常駐している学校があるなど、施設設備が整っている
・個々の障害に合わせた対応をしてもらえる
・高等部で職業教育が受けられる

【デメリット】
・少人数制のため、通常学級の子供や、同年代の子供との交流が少ない
・特別支援学級と比べて学力向上のための授業が少ない
・障害の程度によって入学できない可能性がある
・地域差、学校差がある

これらの点を踏まえた上でどのような選択をするのがよいでしょうか。

必ずこう!という正解はありませんが、今の私の考えをまとめておきますので、就学先に迷われている方は参考にしてください。

・生活の自立を優先させたい場合は特別支援学校を、学力の向上を望む場合は通級、特別支援学級を。

3つの就学先の中で最も大きな特徴は特別支援学校は「生活の自立」を大きな柱としていて、通級・特別支援学級は程度の差はありますが「学力の向上」を目指している点だと思います。まずは、この点に対する希望をはっきりさせることが就学先選びのスタートではないでしょうか。

我が家のダウン症の次男はこれから幼稚園というところですが、今の時点では特別支援学校で生活の自立を中心に学んでほしいなぁと思っています。知的障害があることもあり、学力の向上よりも生活をしていける力を育てていってほしいからです。

どこに行くにしてもデメリットはありますが、それについては以下のように思っています。

・デメリットはちがうところで補えばいい。

例えば、特別支援学校では通常級の児童とのコミュニケーションが取れない点がデメリットとして挙げられています。確かにその通りでこれは大きなデメリットだと思いますが、この点は学童や習い事でうまくカバーできないかと考えています。

また、通級や特別支援学校では通常級との比較が負担になることがあるとされていますが、これも放課後等デイサービスの利用などで落ち着く場所が確保できるかもしれません。また、情報収集の場としても活用できる可能性があります。

・義務教育期間中に高校を考える

高校における特別支援学級の設置はまだまだ途上段階にあります。先ほどのデータにもあったように、今後も特別支援教育を必要とする児童が増えていけば状況は変わっていくかも知れませんが、まだわかりません。
特別支援学級から特別支援学校の高等部を考えてもよいですし、通信制高校を選択肢として持ってもいいかもしれません。いずれにしても少し先の話なので状況の変化を見守りたいと思います。

今は私はこのように考えていますが、正直なところ、数年後どうなっているのかは分かりません。ただ、通い始めてしまったらもう後戻りはできない、という制度ではないので、もしも、通い始めてみてどうしても就学先に違和感がある場合は再度、自治体窓口で転入や編入を検討することも覚えておきたいと思います。

授業料、必要経費の補助について

就学先を選ぶ際にかかる費用面が問題となることもあると思います。公立校であれば義務教育期間中は授業料はかかりませんが、教材費や給食費、場所が遠ければ交通費もかかります。また、私立の学校であれば入学金や月々の授業料がかかります。

これらの費用を補助のため「特別教育就学奨励費」というものがあり、国や自治体が学用品費、教材費、修学旅行費、給食費、交通費などを世帯の収入に応じて補助してくれる制度です。上限はあるものの実費の1/2をカバーしてくれるものが多く、就学希望先を管轄する自治体のHPを確認してみるとよいと思います。

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最後に。

今回は障害児の就学先として「通級」「特別支援学級」「特別支援学校」についてまとめました。

それぞれのメリット、デメリットに加えて地域差もあります。また、個別に学級や学校を見ていくと千差万別になっていると思います。

まずは情報収集をしっかりと行い、自分の子供に合いそうなところを慎重に探していきたいと思います。

通い始めたところが合わなければ転向、転入も検討は出来ますが、環境が変わることは子供にも親にも負担になるので、出来る限りの備えをして就学先選びに備えたいですね。

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