ダウン症、もう少し広い範囲で障害があることが「=不健康」と思われれることが多いように思います。
「障害」という言葉のイメージのせいだと思いますが決してそんなことはなく、健康な障害者(児)はたくさんいらっしゃいます。
一方で、障害そのものではなく、合併症の治療が必要な方も確かにいらっしゃり、ダウン症の合併症には傾向があります。
この記事ではダウン症の特徴と合併症についてまとめました。
ダウン症の特徴
ダウン症の特徴は主に以下のような点が挙げられます。
・全体的に筋肉量が少なく、筋緊張が弱い。運動発達がゆっくり。
・軽度の知的障害。言語面の能力よりも視覚的な認知処理が得意。
・手のひらの一本線。足の親指と人差し指の間が広い。
・鼻の根本が低い。舌が長い。 etc.
健常な体と比較して気を配ることなどはもちろんありますが「不健康」な特徴はありません。
我が家の次男は中耳炎になりやすいくらいでなかなか健康なダウン症児です。よく外で遊びますし、3歳で小走りくらいはしますし、よく音楽に合わせて家で踊っています。風邪もほとんどひきませんし、熱もほとんど出しません。最近はアンパンチが出来るようになりました。
もちろん障害にもよりますが、特にダウン症の場合、健康面で問題となるのは障害そのものよりも、染色体異常に伴う「合併症」です。
ダウン症の合併症
主な合併症、その原因、症状など簡単にまとめてみました。
心臓(心疾患)
心内膜床欠損症(しんないまくけっそんしょう)

心臓の「心室」は肺と全身に血液を送り出すポンプの役目で、「心房」は心室に送る血液を一時貯めて心室が広がったら送り込む役目のタンク件補助ポンプです。
それらを左右に分ける真ん中の壁に穴が開くのが心内膜床欠損症です。
肺への血流が多くなることで血管の傷みが早くなったり、全身の血流が減ったりします。
体重が少ない新生児ではいきなり穴を塞ぐのではなく、まずは肺への血流をセーブする処置をします。生後数か月経って体重が増えたら人口心肺を使って穴を塞ぐ手術となるそうです。
消化器疾患
十二指腸閉塞(じゅうにしちょうへいそく)
「消化器官」は食道-胃-十二指腸-小腸-大腸-肛門の順に繋がっています。
十二指腸の役割は胃から送られてきた食物と、胆汁、すい液などの消化液を混ぜて吸収をサポートすること。この十二指腸が詰まってしまっているのが十二指腸閉塞で、ダウン症の25~40%にみられるといわれています。
消化器官のどこかが詰まっていると消化管が広がったり、特に胎児で消化器官が閉塞している場合、羊水がうまく飲めず、お母さんのお腹が羊水過多の状態になります。
これによって、陣痛が弱くなってしまったり、逆子、へその緒の位置が変わってしまったりといった影響が出ます。
閉塞は出生後、外科的に治療するのが一般的です。
鎖肛(さこう)
肛門が生まれつき開いていなかったり、小さかったり、位置がずれていたりするのが鎖肛(さこう)です。
見ただけでわかることもあれば、出生後しばらくしてから、お腹の張りが強かったり、便が細いといった違和感から気づかれたりするそうです。
治療は肛門と腸とつなげる、もしくは人口肛門を作る手術によって行います。
人口肛門は最初は大腸の位置に作られ、赤ちゃんが成長して腸や肛門付近の筋肉が発達してからお尻に肛門を作る手術を行います。そして、その後に排便訓練など徐々に実施していきます。
目の疾患
(先天性)白内障 (せんてんせいはくないしょう)

眼球の水晶体が白く濁る病気。
水晶体は角膜と共に外からの光を曲げる役割と、有害な紫外線を透過させない役割があります。
白内障は生後直後に見つかるだけでなく、しばらくしてから進行する場合や、外傷による場合など様々です。程度にもよりますが、多くの場合、視力障害を伴います。
早期の外科手術やコンタクトレンズなどによる矯正、目の訓練が不可欠となります。
斜視 (しゃし)
左右の目の向きが正しく同じ方向を向いていないのが「斜視」です。
原因は眼球を動かす筋肉や神経がうまく働いていないためです。治療をしないままにしておくと、片目だけ視力が落ちたり、立体的に物を見る能力が育たないといった影響が出ます。
メガネなどで矯正をしたり、手術で目を動かす筋肉の長さや位置を調整して治療します。
耳の疾患
中耳炎 (ちゅうじえん)
耳の鼓膜の奥にある「中耳」が炎症を起こす「中耳炎」です。
鼻と中耳をつなぐ耳管や、外傷などで破れた鼓膜の穴から菌やウィルスが侵入することが炎症の主な原因です。
ダウン症では「滲出性(しんしゅつせい)中耳炎」が多く、中耳腔に感染がおこり、ここの粘液が過剰に分泌されて中耳にたまり炎症が起きます。
特に滲出性中耳炎では耳の傷みや発熱はあまりありませんが、耳ダレが出たり、耳を引っ張ったり、こすったりします。(この症状があると補聴器を付けられず苦労します・・・・。)
しばらく様子をみて改善しない場合、耳管にチューブを通して通気をよくする手術を行います。
血液の疾患
一過性異常骨髄増殖(TAM)、白血病 (いっかせいいじょうこつずいぞうしょく)
新生児期に白血病様芽球(芽球:がきゅう:若い血液細胞)が血液中に増加するのが一過性異常骨髄増殖(TAM)です。
その後、急性骨髄性白血病や骨髄異形成症候群を発生することもあります。白血病とは血液を作る幹細胞ががん化し、正常な血液を作ることが出来なくなる病気のことです。
腹部膨満や出血傾向を示し、先天性心疾患を伴うことが多いといわれています。
TAMはその名のとおり一過性のため経過観察を行います。症状が改善しなければ交換輸血、強心剤などを投与し治療します。時には抗がん剤投与を行うこともあります。
最後に
極力簡単に、でも間違いがないように書いたつもりですが、ぜひご自身でも調べてみてください
ここに書いたのは合併症のほんの一部で、同じダウン症であっても合併症のない子から複数持つ子など本当に様々です。また、21番以外の染色体に異常がある場合はさらに異なるケースも増えます。その子、その人それぞれということだと思います。
もちろん全員が何の心配もなく、等しく健常な体を持てれば一番ですが、生き物である以上は統一されたパッケージのようにはいかないものです。
健常の子もそうですが、こう接すれば、こうしておけば必ず大丈夫なんてことはないと思っています。個性や性格の違いと同列に、障害や病気があります。一人ひとりと丁寧に接して、何が望まれるか、どうするとお互いが楽しいのかを模索していければと思います。