ダウン症の「寿命」と「人生」の話。

ダウン症の「寿命」と「人生」の話。 ダウン症のこと

こんにちは、Mituso(@Mitsuo29817853)です。

ダウン症児は短命で、長くいきることはできないとかつて言われていました。

しかし、最近では寿命はかなりのびており、平均寿命は50歳を超えるようになりました。

では、寿命が長くなった分、本人は、家族はどういったことを意識していくのがよいでしょうか。

この記事ではダウン症者の寿命がのびたこと、そして長くなった生活でどのような点を意識していくのがよいかについてまとめました。

ダウン症者の寿命はどのように変化した?

まず、具体的にダウン症者の寿命がどのように変化しているのか見てみましょう。

寿命はどのくらい延びた?

(Presson AP, et al. J Pediatr. 2013;163(4):1163-8)

参考として米国のダウン症者の寿命に関するデータを載せました。

1970年ほどまで平均でも10歳までしか生きられなかったダウン症者ですが、そこから飛躍的に寿命が延びていることが分かります。

2010年には平均値でも40歳を超え、中央値は50歳を超えているのが分かります。

現在、日本のダウン症学会によると平均値はおよぼ60歳まで延びているそうです。

いかに飛躍的に寿命がかわってきているかが分かると思います。

寿命はなぜ延びた?

なぜ飛躍的に寿命が延びているのでしょうか。

これは医療の発達によるものです。

ダウン症児は心疾患や消化器疾患などの合併症を持って生まれてくることが多くありますが、これらの治療技術の向上により平均寿命はのびました。

現在は何らかの理由により外科治療をしたことがある方でも、その1/3以上が40歳以上まで生活できるようになっています。

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長くなった時間で何を意識するか?

さて、飛躍的にのびた寿命ですが、これは同時にこれまでになかった環境が本人や家族にできることになります。

新たに意識していく必要があるのはどういった点でしょうか。

健康寿命の維持?

寿命が延びたからと言って、活動ができない時間ばかりが延びてしまっては人生が充実しているとは言えないでしょう。

これはダウン症者に限った話ではありませんが、とりわけ、ダウン症者の場合はより健康寿命の維持を意識的に行う必要があります。

これは医療技術の発展により合併症が克服できても、一般的にダウン症者はどうしても運動機能で健常者には及ばないため、活動量も落ちてしまいがちだからです。

このため、成人病や肥満などには注意が必要で、これは年齢を重ねるほどより重要になります。

以下に代表的な注意すべき疾患についてまとめます。

・肥満、成人病
一般に肥満をはかる指数としてBMIが用いられていますが、BMIは身長と体重により決定される値です。
身長が低いことが多いダウン症者は年齢を重ねるとBMIでは「肥満」と判定されやすくなります。
このBMIだけではダウン症の肥満を正しく判定することはできませんが、筋肉量など考えると肥満の傾向が強いことは事実でしょう。
また、年齢を重ねると筋肉量は落ちていき、個々の食のこだわりにより偏りのある食生活となった場合は肥満、さらにそれに起因する成人病のリスクは更に高くなります。

・アルツハイマー、退行、うつ病
ダウン症候群は21番染色体に異常がある障害ですが、この21番染色体はアルツハイマーと深い関係があると言われています。
また、退行やうつ病は環境の変化によるストレスやトラウマによって引き起こされることが多いとされており、就労や引っ越しなど、人生が長くなった分そういった可能性は高くなります。
これらは普段からのケアや親密なコミュニケーションにより発見しやすく、十分な休養により発生を抑制しやすくなると考えられています。
本人がいやな出来事を周囲に伝えられる環境をいつも用意しておく、小さな努力を認めてあげる、といった細かな配慮がストレスの軽減にもつながります。

これらを抜本的に解決する方法はありません。

健常者でも同様にリスクがあるものばかりですが、ダウン症者の場合はより意識が必要になる、ということです。

少なくとも年に一回の検診、定期的な運動、日ごろからの食事コントロールを積み重ねていくことが唯一の解決策と言えるかも知れません。

(参考) ダウン症のある成人の健康管理 愛知県医療総合センター
https://www.pref.aichi.jp/addc/eachfacility/tyuuou/library/pdf/1_04_downsyndorome_adulthood.pdf

社会との関わり?

より充実した人生を求めていくと、社会との関わりはとても大切なものになってきます。

長くなった時間を多くの人や機会とふれあうために使うことができれば、より充実した人生を送ることができるのではないでしょうか。

誰とどのように接していくか、どこで生活するか、また、健康や金銭面の管理をどのようにしていくかなど考える必要がでてきます。

生活する場所について考えると、成人したダウン症者の半数はこれまで親元を離れグループホームで生活しているそうです。

国土交通省の調査によると障害者グループホームの数は営利法人などの参入により年々増加傾向にあります。

令和3年 国土交通省 社会保障審議会障害者部会
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000851065.pdf

これらはダウン症といった先天性障害のケアを主目的として増えているわけではなく、高齢化社会によって起こっている変化のようです。

しかし、最新の「障害者白書」によると高齢者に関わらず障害者の数は増加傾向が続いています。

令和4年度 国土交通省 障害者白書
https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/r04hakusho/zenbun/pdf/ref1.pdf

障害者の増加は「社会環境の変化」や「障害の認識に変化」が原因だと言われていますが、より身近なものになっていくでしょう。

このような背景を考えるとグループホームは今後より多様化しながら数を増やし、社会に浸透していくでしょう。

今後はより社会のニーズにあったグループホームが浸透していき、障害がある方はそこを起点に生活していくことが一般的になるのではないでしょうか。

また、障害者の自立を考えるうえでは「生活の自立」だけでなく、「医療のケア、金銭の管理」がとても重要になってきます、

健康面の管理はグループホームでは非常勤の看護師により日常的な医療のケアが行われ、加えて、支援員、本人、両親により健康面に注意を払います。

お金の管理については障害の程度が軽い場合は本人が行うこともあるようですが、後見人、もしくはグループホームによる代理管理が行われています。

これらも社会の変化やニーズに合わせて方法が変わっていくことが予想されますが、いずれにしても本人や家族だけで全てをカバーするのは難しいでしょう。

そのため、グループホームだけでなく、もう少し広い範囲で地域ごとにコミュニティを作り、一体となって取り組んでいく仕組みができてくるのではないでしょうか。

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家族のケア?

グループホーム、生活の自立について少し書きましたが、ダウン症や他の障害者が必ずしも自立した生活ができるとは限りません。

しかし、徐々に本人ができることが増えていく可能性は大いにありますし、それによって家族の負担は軽減されていきます。

そう考えると、将来の不安と向き合い続ける家族にも自分達をケアする時間ができてきます。

グループホームなどで生活をしていなくとも、就業や通所する時間ができれば家族にも余暇ができます。

こういった家族のケアを考える際に問題のひとつとなるのが「地域格差」です。

現状を調査した新しいデータを見つけることができず、具体的な数値ではわかりませんが、首都圏や都市部のほうが地方よりも就労や支援に対する機会が恵まれていることは容易に想像がつきます。

地方では地域のつながりによりたすけあうことが出来るかもしれませんが、今後より深刻になる高齢化を考えると厳しい状況が予想されます。

就労の機会や十分なサービスを受けられる環境は、本人だけでなく、家族をケアすることにもなるため重要な要素として考え行く必要があると思います。

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まとめ

寿命が延びることに伴って考えていかなくてはいけない点についてまとめました。

長くなった時間は本人、家族にとって有意義なものにしていく必要があります。

そのために既存の仕組みではまだ不十分な点について理解し、備えておく必要があるのだと思います。

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